一、葦の材料採り
目安は、6センチ、太さは、10ミリ
リードになる材料は、葦の節間によって少し異なりますが、第三節から第四節あたりが一番良い。水面もしくは陸から直ぐの第一節。第二節は水を吸い上げる維管束の目が粗いので、葦を削るとその目が出てきて、適さない。また、葦の生育を見ると、下の方の節は、少し細い。第三節か第四節あたりから、次第に太くなっている場合があるので、それを見極めて、材料取りをすべきである。
また、手で押してふわふわするものや、柔らかいものは適さない。実入りの十分堅いものを使うことである。ノコギリで切ると、ゴリゴリと堅い音がする。
この図は、取るところの図面です。左の葦の図面で吹き口は下側で、管に差し込む方は、上側です。ちょうど、上側が、差し込んだ時止まるところです。その太さが各管の内径に合うように、材料を選びます。約10ミリ〜11ミリです。
(a)ノコギリで切る
割れないように注意、繊維を抜かないように注意です。
(b)葦の中の掃除
葦の中は、空洞ですが、綿のようなゴミがありますので、それを掃除します。
事前に、割り箸に綿を巻いて、その上から、糸で縛ります。太さは、葦の中を通る太さでいいです。
また、葦の中の薄皮である用賀がとれる場合もあります。その時は、綺麗に取りましょう。また、この用賀は吹き込む時やよく鳴っている時にもとれる事があります。その時は、息が入りませんので、取り除きます。取り除くと音程が少し下がります。また、堅いリードは、鳴りやすくなります。音色も少し変わりますが、普通は判断出来ません。
二、葦の皮をむく
切り出しナイフで、葦の皮をむきます。注意点は、皮以外むかないということです。
皮以外を削ると、ひしいだ時にそこが弱くて割れます。
イ、ナイフで皮のみをむきます。
皮をむく時の目安ですが、普通は6センチの内の半分、3センチ位をむきます。しかし、材料が堅いと3センチより多くむき、材料が柔らかいと、3センチより小さくむきます。その理由は、ひしぎが終わった時のできあがりの形を同じ状態に仕上げる為に、削り方を考慮します。
ロ、ナイフをたてて前後に動かし、葦の目を取ります。
ナイフだけでは、綺麗に仕上がりませんので、ナイフの目をたてて、筋目をけずります。また、ペーパーをかけてもかまいませんがかけすぎると、削れますので、注意して下さい。ひしいだ時にそこが弱くて割れます。
皮むきの注意点
イ、素材の堅さ・強さを判断すること。
ロ、その判断に基づいて、皮をむく
ハ、ひしぎの出来具合を同じにすることを考える
堅い場合 柔らかい場合
ひしぎ終了後、胴の厚さを考えてむく。
各自が、一番吹きやすい胴の厚さを知っておく必要があります。
三、和紙を巻く
あらかじめ、和紙を3センチの幅に切っておく
皮をむいた葦に、のりずけした和紙を二回巻きます。
古来の方法は、葦の側面にのみ和紙をのりで付けてい ましたが、その必要はありません。また、その方法で行うと時間がかかり、やりにくいです。二回巻き付ける方法のほうが、熱による焦げや焦げ付きを二度巻くことで保護してくれます。
四、ひしぐく
ひしぎゴテとカセットコンロを使用。それと、茶碗一杯の水。
炭火が良いが、無ければカセットコンロがいい。電気ストーブや電気コンロは駄目です。
最初に、コンロでひしぎゴテを暖めておきます。水に漬けると、ジュッと軽く音がするくらいです。熱くしすぎると、葦を挟んだ時に焦げて駄目になります。熱してないと、葦を挟んだ時、滑り落ちることもあります。はさみ込んだ時、和紙が水に濡れてますので、軽く音がします。
(a)和紙の巻いた葦を、水につける……ひしぐ寸前に、水につけて、すぐひしぎに入ります。長く水にはつけません。つけすぎると、せっかく巻いた和紙がはがれてきます。水に通すという位です。
(b)栓をする……あらかじめ、栓を木で作っておきます。
栓をする理由は、葦の内部の温度を高めるのと、楕円になるのを防ぐ。
(c)すぐに、ひしぎにはいる……ひしぐ方向
 丸い場合は、どの方向からひしいでも良い。
楕円の場合は、矢印の方向、円の長い方からひしぐ。
(d)火にあぶる……ひしぎゴテに挟んで、火の上であぶる。この時焦げないようにコテを回転させる。火の強さは、中火より少し弱い位です。
【堅い材料の場合】
普通の堅い材料は、また、煤のかかった葦は、下図のように三段階でコテを動かして、ひしいでいく。
第一段階は、15ミリくらい、和紙の半分くらいに コテをあてて、少し楕円になるくらい、本当に軽く 押さえる。押さえすぎないこと。時間的には、2〜 3秒の時間。
第二段階は、さらに第一段階の半分位をかけて、さ らに楕円になるように、非常に軽く押さえる。時間 的には2〜3秒の時間。
第三段階は、1ミリ〜2ミリ位をかけて、さらに押 さえ、リードがぴったりつくようにする。時間的に は10秒〜15秒くらいの時間。
【柔らかい材料の場合】
柔らかい材料の場合は、自然と早く楕円になりますから、第一段階と第二段階をかねて行い(時間は2〜3秒)、すぐに、第三段階に入ります(時間は10秒位)。
ひしぎを行う時の、注意点
@コテで強く押さえて、ひしぎをしないこと。コテは軽く握って、常に火の上で回転させて、全体に一定の温度になるようにする。この時、和紙が水で濡れていて、それが乾こうとして、葦の内部温度が上昇します。それの逃さず、見つけて瞬時にコテをすこしずつ回して行くと、自然に葦がひしげてきます。時間的には、堅い物でも15秒くらいで、柔らかい物なら、10秒かかりません。煤がかかった葦でも、同じです。水が蒸発する時の上昇温を利用すれば、簡単にひしげます。もし、それ以上、時間がかかるなら、材質に問題があるか、ひしぎ方に問題があるかです。目安は、短期勝負で、10〜15秒と覚えましょう。
A時間をかけすぎると、焦げ付きます。和紙が焦げるのは、中まで焦げていないですが、葦まで焦げるようでしたら、火加減と時間を考えることです。
B葦の素材を見抜き、力の入れ具合とあぶり方を考えて行うことです。
(e)ひしぎ終わると同時に、栓を抜き、中の水分を完全に抜き取り、乾かすこと。
時折、息で葦の中を吹いて、息をいれて、さまします。
よく乾燥させれば、水気を含まない限り、開きません。
もし、心配なら、右図のように和紙を頭に貼り付けて下さい。
(f)2.3日置く。直ぐには、削りません。
葦の水気が十分に抜けきったところで、削りになります。
五、削る
使用する道具は、木製ローソク・切り出しナイフ・羽ヤスリ・サンドペーパー
(a)和紙をはがす(舌でなめて、湿らせてはがす)
(b)ナイフで削る(木製ローソクを使う)
第一段階
(イ)ナイフ、鉛筆でセメの位置にかるく印をつける
※ここでの注意点
セメがどの位置に来れば一番良いかを考えるます。
次に、横幅に対してセメの止まる縦幅の方が少し長くします。その理由は、最後の仕上げで、頭を少し削り落として丸くしますから、少し短くなるからです。
第二段階
(ロ)上を削る
セメの中心部Aをポイントとして横線部分を削る。両面削ります。
※ここでの注意点
まず、削る厚さを考えます。
素材が堅い場合は、葦の厚さの半分位。柔らかい素材は、それより薄く削る。基本的に、葦の肉厚は、1ミリ位ですから、その半分0.5ミリ位が目安となります。表側・裏側とも、均一に削ることです。どちらかが厚いと、息の入りが悪くなります。
第三段階
(ハ) (ニ) 横と下を削る
(ハ)と(ニ)の横線部分を削ります。
削りの厚さは、(ロ)での削った厚さを考えて行います。
(ハ)の削りは、どの葦でも同じように削りますが、(ニ)の作業は、葦の堅さによって、矢印の削りを始める場所が違ってきます。堅い材料は、(ハ)の縦の長さと同じ位下から削りが始まります。しかし、柔らかい材料は、(ハ)の長さより、短く浅い所、堅い所より上から削りが始まります。その理由は、堅い材料は腰もあり、セメを付けてもしっかりしていますが、柔らかい材料を深めから削ると、腰自体が弱くなり、セメで押さえられると、すぐにへばってしまい、すぐに壊れることとなるからです。
図12 図13
ひしぎの状態で、柔らかい材料は、図12のようになっているので、浅くなります。堅いものは、図13のようになっているので、深くなるります。
基本的な蘆舌は、(ハ)と(ニ)が同じ長さで、上下対称となるのが一番良いです。
特に注意
(ハ)と(ニ)が削り終わると、筋目が残っているので、それを綺麗になるまでナイフで取り除きます。
この筋目は、紙ヤスリで磨いてもとれません。紙ヤスリでは柔らかい所を磨いてしまい、逆に筋目を出してしまいます。必ず、ナイフで行います。
第四段階
(ホ) 丸く削る

太いものは、 細いものほど、
直線にちかくなる。 丸くなる。
ここでの作業は、ナイフと羽ヤスリで行います。葦の吹き口を左手で軽く押さえて、ナイフで1ミリから2ミリ左右を落とします。次に、羽ヤスリで、吹き口の内側向きに削って、丸くします。
ここでの注意点
@ここでは、太いものも、細いものも、鳴る所の面積が、ほぼ同じに大きさになるように削りあげることです。理由は、振動するところの面積が同じことで、同じ音程が出せるようにするのです。

太い場合も細い場合もほぼ同面積になります。
また、取り付けるセメの大きさ・太さ・強さなども考えて、丸みをつけることです。
Aセメの止まる所は、極端な段をつけない。吹き込むうちに、自然とできてきます。
× ○

B削る時、蘆舌の先端は少し残す
先を少し残す
C削るとき、葦の材質を見極め、葦に適した 形に削るのが、もっとも良いですが、これには経験を必要とします。しかし、より多くリードを削ることで、うまく出来るようになります。
もう一つは、演奏技術もしっかり勉強することです。演奏することで、リードの善し悪しと、演奏しやすい、息持ちのいいリードが分かってきます。自然と良いリードを目指してまいります。
六、セメを付ける
セメの作り方も諸法ありますが、蘆舌の材質、ひしぎ具合、削り方によって、セメの形も違ってきます。蘆舌の形が一つひとつ異なるのと同様に、セメもまた違ってくるのです。
セメの作り方は、各自が最も吹きやすいように、工夫するのが良いです。
【セメの製作】……ナイフと木製ローソクを使います。その他に、小さなペンチ・赤絹糸です。
真鍮で出来たセメ作り用の道具や、堅い木で出来たセメ作成用の道具は、使いません。その理由は、セメも一つひとつ形や形状が異なるのです。
籐を7センチ位に切る
割る カマボコ型

2ミリ〜3ミリの間
↓
ここを取る
↓
← 蘆舌に合わせてみる
印をつける
↓
印から外側を削り取る
↓
ローソクの先を利用して、赤絹糸で結ぶ
羽ヤスリで、結ぶ所を溝を付ける
セメを作る時の注意
Aの切り取りをする場合、葦の腰の幅を考えて、切り取りを行う。
Aを大きく取るときは、蘆舌の胴に厚みがない場合です。
Aを小さく取るときは、蘆舌の胴に厚みがある場合です。
つまり、ひしぎの状態に応じて、切り取りの大きさが替わるのです。
七、帽子を作る
檜を挟む道具・檜を削る道具
@普通は、手彫りで、帽子を作ります。細かな正目の檜を、手彫り用の挟む道具で挟ん で、左手をコテにして、右手で掘っていきます。1枚作るのに、2分から5分かかります。
Aもう一つの方法は、電動のドリルを使って、帽子を作る場合もあります。それには、手作りの道具を作らなければなりません。特殊な10ミリの円盤状のドリルを作ります。これは、桑名の奥田先生から教わりました。ある研磨用の鉄板を10ミリ位に丸くカットして、それを二枚ボルトとナットで固定して、作ります。市販では、売っていません。
私は、自作のこれを使用しています。一枚出来る時間は、10秒くらいです。
八、蘆舌を吹き込む
期間は、三ヵ月くらいから六ヵ月くらいまで、様々です。吹き込むと言うより、リードを時間かけて開く強さを弱くしていくといったほうが、正しいかもしれません。
作りたてのリードは、元の状態に帰ろうとする力が大きいです。ですから、その力が弱まれば、安定して吹いていける状態になるのです。
【吹き込む手順】
以下の事は、私がリードを吹き込む為の条件です。
@基本的に、平調・盤渉・黄鐘・壱越・双調と言った基準となる音程がとりあえず出る 事がまず第一条件です。もし、音が出ないものは、リードとしての、完成が出来てい ないので、削りの工程をさらにチェックし直します。
よく「吹き込んで行けば、その内鳴るようになる」と言う人がいますが、それは絶対 ありません。鳴るリードは、最初から最低限の音・平調・黄鐘などどれかが出るので す。吹き込んで行けば、その内という考えは、削りが十分分かっていない人の判断で す。吹き込んで鳴るリードは、開くのは開くのですが、何らかの基本の音が出るはず です。もう一つは、セメで押さえすぎている場合もあります。すると、音は出ません。 出ないというより、開かないのです。これもチェックします。逆に、柔らかめのセメ を入れて、吹き込むを行うということです。
A蘆舌をお茶につける。
昔からお茶は番茶がよいと言われますが、緑茶ならどれでも良いと思います。
お茶につけると言いますが、お茶の中に長い時間は漬けません。どちらかと言うと、 お茶をくぐらす・お茶で湿らすという程度です。全体をお茶に通して、和紙の図紙の 水気を切ります。これをなんか月かやりながら、少しずつ管に入れて、時折吹いてみ るのです。また、吹いている時に、リードの厚みも微妙に異なるのに気が付く時もあります。その時は、ナイフかペーパーを入れて、一定にします。次第に、開き具合が 弱くなり、セメが合わなくなってきます。セメの入れ替えをします。
この時の注意
茶に漬けるというので、長い間お茶につけている人がいますが、長く漬けると元の状 態に帰ろうとし、また葦の維管束に水が入り、柔らかくはなるのですが、ぶよぶよの 状態に鳴ってしまいます。これでは、りーどとして長持ちしませんから、注意して下さい。
堅い材質のリードを時間をかけて、吹きやすくするのが「吹き込み」です。その結果、長持ちするリードが仕上がるのです。根気よく作りましょう。
【リード調節でよくある質問】
@低・高音が出ないという質問
○削りのチェックをする
削りの(ハ)と(ニ)が十分でない場合に、低音や高音が出ません。さらに、リード自体の均一性がおかしいとそうなります。再度、これを調べることです。
○それでも、解消しない時は、セメで押さえ込んでしまって、リードが動かないという状態でないかをチェックします。
○リードの太さ・細さ・管に合っているのかどうかをチェックする。
図持ちが細いのに、太いリードをいれれば、高い音は出にくくなり、逆に、太い管に細いリードを入れれば、低い音が出にくくなります。つまり、適合性の問題です。
Aセメはどんな形が良いのですか?
篳篥を演奏する人がたくさんいるように、セメの好みも色々あります。口の形・唇厚さ・様々な個人差がありますので、取り囲むようなセメが好きな人もいれば、少し 左右が空間のあるセメを好む人もいます。要は、息もちが出来て、長く楽に力まず吹 いていけるセメが理想的ではないかと思います。私自身も思考錯誤の毎日です。
以上、簡略に記載しましたが、製作法は多少異なってもかまわないと思います。良いリードが出来ればいいので、各自工夫して下さい。しかし、良い蘆舌を作るためには何をしなければならないのか。それには、二つあります。一つは、蘆舌をたくさん作ること、経験です。もう一つは、自分の演奏技術を向上させることです。蘆舌は、各自の演奏レベルのものしか出来ません。それ以上のものは、出来ないのです。練習量が増えることが、多くの蘆舌を使用することとなり、引いては、多くの蘆舌を作ることとなり、蘆舌作りと、演奏技術がともに向上していくと思うのです。
立教168年2月26日 きっさん記載
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